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以下は先日、私にかかってきた電話の内容です。
先方「プランはできているんだけど確認申請だけ頼めるかな?」
私 「監理はどうしますか?」
先方「いらないよ」
私 「では、監理者の欄にはどなたの名前を?」
先方「さくらさんで良いんじゃない?」
私 「監理をしないのに監理者欄に私の名前は書けませんよ」
先方「カンリって何するの?」(工事監理の意味が解っていない様子)
私 「基本は設計図書のとおりに施工がなされているかどうかをチェックするのですけど...」
先方「ふーん、じゃ、いいわ」(と、電話を切られる)
先方は年間数棟の住宅などを施工している会社の責任者です。
私がこうやって断る理由は、工事監理を全く依頼されていない建物でも、名前を書いてしまったら全ての責任を負う立場になってしまうから、また、あくまでも違法行為であり、建築士の資格をもつ者として受けてはいけないものだからです。
ここで私が問題にしている「工事監理」という言葉は皆さんにとって馴染みが薄いとは思いますが、実はとても大切な業務なのです。 |
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先日、設計事務所の開設者及び管理建築士の為の講習会に行ってきました。これは、5年に1度(設計事務所は5年毎の更新)、義務付けられているものです。
講習会では、設計事務所の運営、これからの建築士に求められることは何か、などの内容が盛り込まれています。その中に、大きな問題になっている建築士の「名義貸し」の話が有りました。
「名義貸し」=その建築士が設計(又は監理)していないのに設計者及び監理者にその氏名を記載すること。
上記で私が受けた電話の内容がまさにこれなのです。 |
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建物を新築するときには、ほとんどの地域で「確認申請」が必要となります。
確認申請とは、その建物が合法的に設計されたものであるかを図面上で審査をして合否を判定するものです。審査をするのは市町村や支庁の建築指導課であったり、委託された民間の機関だったりします。
申請者はもちろん施主である貴方(建売の場合は販売会社など)
では、設計者は?というと、ハウスメーカーなどは自社を設計事務所登録している場合が多いですから、その会社名と管理建築士(事務所における業務の責任を負う建築士)の名前が書かれてあると思います。
工務店や小規模の建築会社などの場合は、どこかの設計事務所に依頼している場合がほとんどですので、その事務所名と管理建築士の名前が記載されます。
申請書には申請者、設計者の他に、工事監理者と施工会社を記載する欄が有ります。施工業者は依頼した工務店や施工会社になりますので問題は有りません。
問題は「工事監理者」の欄なのです。 |
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工事監理者とは、その工事が設計図書(図面)どおり施工されているかどうかを、構造、仕様、仕上げまで責任を持って監理(指示・指導・報告)する人のことを言います。
ハウスメーカーなどの場合は、仕様書どおりに現場の担当(営業や施工担当)が指示指導する形が多いようです。(法律的には建築士の資格が無いと監理はできませんが...)
では、工務店の場合はどうでしょう?たぶん多くの場合は、設計者=監理者になっていることと思います。この形が一般的だともいえますね。
ただし、監理者欄に名前が記されていたとしても、その者が果たして監理をきちんとしているかどうかが問題なのです。名義貸しと言われる多くは、名前だけの記載であり、実際の施工は建設会社や工務店に任せてしまって完了検査のみ立会いというかたちです。これでは、実際に設計図書どおりの施工かどうかの判断は不可能です。 |
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なぜ、このようなことが存在するか?の前に、なぜ工事監理が必要なのかを書きたいと思います。
新築される住宅の多くは「木造」です。木造の構造(スジカイや耐力壁など)についての審査は(釧路市及び釧路近郊では)行なわれていません。それは、建築基準法上、全て「建築士」に任されていることだからです。「建築士が設計・計算してOKである建物」という前提があってこその審査なのです。
確認申請図書を作成する段階で計算して図面に耐力壁(スジカイ)の位置を指定しますが、実際に現場でそこに入っていなければ、それは構造上弱いものになってしまいます。それを誰が監理するのでしょう?ということなのです。
計算無しで現場で耐力壁が無くなってしまうということも実際に有るのです。壁があってもスジカイが入っていないということも有ります。基礎の鉄筋のピッチが広かったり、アンカーボルトが少なかったり...そういったものも目にしたことが有ります。
住宅で銀行ローンの場合、中間の検査は有りません。(金融公庫は一応有りますが、あまりあてにはなりません。住宅保証機構登録の場合は2回検査が有りますので、まだ有効ですが、それでも隠れた瑕疵までは検査できないでしょう)
建物の位置が間違っていないか。杭がきちんと施工されているか。基礎の配筋は間違いないか。コンクリートはJIS規格品か。アンカーボルトは所定の位置に入っているか。木材の仕様は間違いないか。金物は指定のものを使っているか。サッシ、ガラスの仕様はどうか。断熱の施工はどうか。仕上材の仕様は規定どおりか。役所などに所定の届出がなされているか。などなど...これらの監理全てを監理による指示を受ける側である施工業者に任せられますか?ということなのです。 |
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なぜ建築士が監理しない(できない)現実があるのか?
監理を依頼しない理由としては
1.思ったような施工ができない(指示されたりするのが面倒くさいから)
2.設計料金とは別に請求される監理料金を払いたくない(払えない)
などが想像できます。
施工会社側にも言い分はあると思います。
設計(確認申請)料金以上に施主に請求できない。又は、設計料金はサービスとしていて、必要最低限の予算を経費の中にくんでいるにすぎない。だから、余計な費用は払えない(払いたくない)。
ようは、設計料金を計上しない→安価に抑えたい→確認申請だけ依頼する→監理は誰もしない→どこかに欠陥がある建物になる可能性が有る...となるわけです。
もうひとつ、(設計事務所は)仕事が欲しい→名義貸しをする→また仕事がもらえる。という図式もあります。上記の私ように依頼を断ったら、もう二度と依頼はないでしょう(^^;
名義貸しは法律に反すると解っていながらも、日々の生活のために仕事欲しさで引き受ける設計事務所が有るのは事実ですし、そういう建築士が居るから名義貸しが無くならないのも事実です。 |
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しかし、こういう流れになってしまうのは「ここの棚をサービスします」と同じような形で「設計料をサービスします」に納得してしまう施主側にも責任があると思います。
設計事務所が設計と監理を責任を持って進める以上、それなりの報酬が発生します。サービスではできません。(通常、施工会社もサービスと言いながら経費に上乗せしています)
ちなみに、監理を依頼しないで進める現場の図面は確認申請図書の5枚ほどの図面だけです。電気も設備も図面は有りません。構造上だって、書いてあるのはスジカイ(耐力壁)の位置だけで、その他を指示する図面は皆無です。それでも建ってしまう現実も有るのですが...(^^;
本当に実施設計と監理をするのであれば、図面だけでもそれの2〜3倍。その他に構造図、金物指示図、構造計算書(これはまちまちです)等が作成され、本当であれば、これを元に正式な見積書が作成されます。
逆に、施工会社の概算見積に準じた仕様を元に図面を作成するということも行なわれます。(建売やモデルハウスなどはこの形で進めます)
中には、内装や照明、カーテンまでもコーディネートすることも有ります。(櫻はここまで受けることが多いです)
監理は、週に1〜2度、工事の進捗状況によって現場へ行き、確認したり打ち合わせたり、時には指図することもあります。住宅の場合で言えば、工期が3ヶ月くらいなら現場へは12〜16回、多い場合は20回以上は行かなければなりません。それを無料ではできません。
相場で言えば、40坪くらいの木造住宅で、確認申請だけの依頼では15〜20万円(申請料は別途)、監理までを依頼された場合は40〜60万円くらいです。その他に、内装や照明、カーテンのコーディネートなどの料金がプラスされていく形が多いですね。分離発注の場合はまた別で、この他に費用がかかります。
確かに、厳しい予算の中で設計料金や監理料金を省きたくなる気持ちも解らないではないですが...きちんと監理され責任の所在が明確となっている建築は、最終的には施主の為になることだと思いますし、何より安心して住むことができるのではないでしょうか。
テレビでは「欠陥住宅」の特集を良くみかけます。
だいたいの施主は「信用してたのに裏切られた」というようなことを口にしますね。
こうならない為にも、設計者と監理者は誰か?いくら費用が必要か?ということを施工会社に問い合わせてみること。もしくは建てる前に設計事務所に相談することをお勧めします。 |
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名義貸しをした工事で施主から訴訟を起こされ、施工会社と共に敗訴し、損害賠償を支払っている建築士の話も聞きます。 少額の設計料金の仕事で数百万の損害賠償責任を負う立場であるのが悲しいかな建築士です。名前を書いただけ...では通用しないのです(^^;
また、きちんと設計監理した建物は、全く問題が発生しないか?というと残念ながら100%そうではありません。人間ですからミスも有り得ますし、現場との連携(勘違いなど)や資材の状況(これも建築士に確認の責任が有ります)によって、なんらかの問題が生ずることが有ります。
これに対しては、ほとんどの設計事務所が「建築家保険」に加入していると思います。何か無いように最善の努力をするが、もし万が一何かがあった時のための保険です。櫻も加入しています(^^)
これからの時代、施主も、施工会社も、設計事務所も、、きちんと責任と立場を明確にした合法的な「建築」を進めていきましょう!それが、お互いの利益の為でも有るわけですから(^^) |
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| このコラムは、かなりの部分に私の主観・感想・思い込みなどが多々盛り込まれていますので、使用上は充分ご注意ください(^^) |
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