Project アイディア02 住まいやすさの提案

1.暖かい家・涼しい家
冬の気温−30度にもなる地域がある北海道の住宅にとって「暖かさ」はとても重要なことです。更に、夏の気温30度を超える地域もあるため「涼しさ」もまた重要です。一見相反することのようですが、それらを1つの住宅で実現するのは決して難しいことではないのです。

構造と工法
日本の住宅に最も多い木造の工法について考えてみましょう。「木造」には、大きく分けて「軸組工法」と「枠組工法(2×4など)」が有ります。暖かい家の基本は「省エネルギー」であること、つまり、暖房器具により暖められた室内の空気を室外に逃さないということです。それが建て方でどのように違ってくるかを工法別に表にまとめてみました。

建物工法 特徴 メリット デメリット
軸組工法 日本で古くから受け継がれている伝統的な柱と梁による工法である。 木材の特徴を充分に生かした自由な空間造り(一部鉄骨使用など)ができ増改築がしやすい。 工場生産である枠組工法に比べ現場での工期が長い。
枠組工法 欧米から入ってきた壁が主体の合理的な工法である。 耐震性能が良く、工場生産のため現場での工期を短縮できる。 壁で強度を保っているため大きな空間が取りづらく、間取りに制限が出てくることがある。

断熱工法 特徴 メリット デメリット
充填断熱 もっとも一般的で、グラスウールなどを壁内や床下、天井裏に充填し断熱する工法。 多くは、グラスウールを充填しスタイロフォームなどを貼り付けるので、一般的に考える暖かさとしては充分です。 気密工法にするのが難しく、気密性能が劣ります。ゆえに、壁内及び室内に結露が発生する場合があります。
外貼り断熱 断熱材を壁の外側・屋根(天井裏)、床下(土間面)に貼り付け、それにより建物全体を覆う工法。 多くは基礎や床下まで覆った気密工法とするため、より暖かく省エネルギーな建物となります。壁内や室内での結露が発生しづらいという利点もあります。 充填断熱工法と比べ、コストが割高となります。

プランや間取り
プランから言えば、冬は各部屋の温度差が無いように、夏は家の中を風が通るようにという、ごく一般的に昔から言われているものが最適です。北海道では夏でもエアコンをつける日が少ないので、夏は自然通風を中心に考えてみましょう。

換気イメージ図
※上記イラストはイメージ図であり実際のものとは異なります。
−暖かい家−
わかりやすく平屋建を例に挙げます。室内環境をより良くするためセントラルヒーティングとしています。各主要室やホールには暖房パネル(赤線)が設置され、家の中の気温を一定を保つようになっています。窓はlow-eガラスを用いた断熱サッシを使用し、断熱は外貼り断熱工法採用で高気密・高断熱の建物とします。熱交換式の24時間換気システムを導入する事により、室内の温度の低下を防ぎ暖房効率を良くすると共に、室内の粉塵や化学物質の除去を行うのが良い方法です。この方式は暖房時だけではなく、冷房時にも有効な方法です。
通風計画イメージ図 −涼しい家−
北海道(特に道東)の夏は冷房を使うより自然換気で涼をとる方が多いと思いますので、自然通風の計画を考えてみましょう。ドアを開け放ったときに、天然の扇風機となるよう計画した水色の矢印、これが風の流れです。東西・南北の風の流れを室内で感じられるよう、対面して窓を設置しました。微量の風流で、人が感じられる体感温度が2〜3度下がると言われています。low-eガラスを用いた断熱サッシは、室内の暖かい空気を逃さないのと同様に、外の暑い空気を室内に取り込まないという性質があります。省エネルギーを考えると、有効なガラスです

2.動線を考えた家
間取りの中で一番重要なのは『動線』です。これを考える上で住む方の生活パターンが重要な鍵となります。現在の行動パターンや将来予測されるパターン、家族全員の意見などを色々と考えながら間取りを考えるのがベストでしょう。
左の写真は先日竣工引渡しをした住宅です。、施主は60歳代のご夫婦で、今年3月に工務店によって開催された完成内覧会で建物をご覧になり、気に入られて、キャンペーンで行なっていた無料プランニングにお申込された方です。
これが、その時にご覧になられた住宅の平面図です。
リビングの円形出窓と高い天井、玄関先のスロープ、引戸を多用したプラン、施工精度のよさを気に入られ、工務店を通しての依頼となりました。櫻では無料プランニング申込時に、ご自分のイメージでの間取りを簡単に書いてもらうことが有ります。今回の施主はイメージを強くお持ちでしたので簡単な間取りを想定してもらいました。
左の画像は、施主からの最初の案です。
この他の要望として
@収納をなるべく多くしたい。小屋裏収納が良い。
A円形の出窓が欲しい。
B外断熱工法(とにかく暖かい家)
C吹抜け(高い天井)
Dオール電化住宅
E予算は1,400万円以内
などが挙げられていました。
☆山崎からの提案
@夫婦二人の家であり施主の年齢を考えると、将来使用に危険のある小屋裏収納は避けるべく、納戸の配置を考慮。
A玄関ホールは暗くなりがち。窓を設けていくらかでも明るくしたい。
B予算を考えると要望を全て満足させるのは難しい為、説明をした上での工法の見直しが必要。
Cオール電化の特徴を説明した上で予算を組みなおすことが必要。
D玄関へのスロープなどの設置
そして、これが最初に提案した平面と外観パースです。これを持って、第1回目の打ち合わせが行なわれました。
そこで判明・判断したこと
@寝室は夫婦別々。
A旦那さんは友人と家で呑むのが好き。その場合はリビングでは無く和室を利用したい。
B奥さんの寝室は東側に。出来れば花(鉢)を置きたい。
C旦那さんの部屋は洋室。和室とつなげたい。
D食器棚などの家具は今あるものを使用する。
Eフリーザー(冷凍庫)を置く。
Fウッドデッキもつくりたい。
G小屋裏収納は将来的に使用頻度が少なくなると考えやめる。
H予算上、外断熱工法は難しい為、在来工法とする。
I東面に勝手口が欲しい。
問題点:奥さんの寝室からトイレが遠い?
第2回目の打ち合わせに提出したプランです。話が煮詰まってきていましたので、平面図や内観パースも組み合わせた説明となります。第1回目での変更は
@東側寝室を狭くしてフリーザー置場を確保。キッチンは今ある食器棚を置けるスペースを確保し、東面に勝手口(テラスドア)を設置しました。
A納戸を中央に配置し通路も兼ねました。これは、急な来客時でもLDを通ることなくトイレなどに行けることを配慮した結果です。距離的には少々遠く夜間のトイレが心配されましたが、納戸にセンサー付きの足元灯をつけることで対処しています。
B掘りごたつの要望が有り基礎の構造を考えて配置。
C旦那さんの寝室と和室を3枚引戸(障子)でつなげ、広い空間として利用できるようにしています。
Dテーブルが置ける広さでウッドデッキを計画。
E玄関ホール正面にカウンターを作り、上部は絵を飾るスペース、下部は収納スペースとしてあります。
プランが確定し、見積りの調整と同時に上記のような室内パースや材質の見本を参考にして内装の打ち合わせが始まります。このようにCGパースを提出することで、室内をイメージしやすいと施主には好評です。この段階での見積り金額は約1,600万円。無駄なものを省き、必要なものを取り入れることで金額の調整が行なわれます。工法や設備の仕様など、施主も納得しながらの金額調整を進めます。
見積が確定し、設計契約と工事請負契約へと進みます。この時点までの打ち合わせ回数は既に10回程。その間に、施主であるご夫婦双方の意見と要望を細かく聞き、工務店の提案、設計士の提案などを出し合い、皆で一緒に話し合い、プランから建築費用、工程を決めていきます。それが『施主にとっての住まいやすい家』への第一歩です。
無駄な装飾は無しのシンプルな内装と要所に使用した木質感、高い天井と円形出窓は、当初施主が希望した通りです。最終の建築費用は約1,700万円と、最初の予算を200万円ほどオーバーしましたが、住まいやすく暖かい住宅が完成しました。完成内覧会の際も大変好評だった間取り。実際に生活を始めた施主からは『とても使いやすい動線』と好評です。


一級建築士事務所 設計処 櫻